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今日のつまみ食い
「ティトゥス殿、私があなたをお助けして、いまあなたを悩ましている御心労からお救いすれば、どんな御褒美がいただけますか。」
かの英雄ティトゥス・フラミニーヌス将軍(=プルターク英雄伝に伝記がある)に向かって、「たいした富はないが純朴さにみちたギリシアの羊飼い」(=将軍に敵の背後の裏山への間道を教えてローマ軍のマケドニア戦勝利のきっかけを与えた)が話しかけたのと同じ言葉で、ティトゥス・アッティクス君、僕は君に話しかけさせてもらおう。もっとも、君がフラミニーヌス将軍のような心労に悩まされていないのは僕も知っている。
なぜなら、僕は君の沈着冷静ぶりをよく知っているからだ。君がアテナイから「アッティカの」というあだ名だけでなく、教養と知識を持ち帰ったことは僕も理解している。もっとも、時には君も僕と同じことに多少は心を乱されているかもしれないが、それに対する慰めはもっと大きな仕事なので、別の機会に譲ろう。いまは老年について君のために何か書くことにした。
キケロ著『老年について』冒頭より
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