公共工事に泣かされる

播磨町の住民



 
 
 ここ播磨町も、住民が望みもしない物を役所がつぎつぎと土建屋に注文して作らせる町である。ただ作らせるだけならまだよいが、公共工事は近所の住民にとっては大迷惑である。この町の公共工事は騒音対策がほとんどなしに行われるからである。
 
 もちろん町は何もしないわけではない。「いついつまでの間どこそこで何時から何時まで工事をします。ご協力をお願いします」と書いた紙を近くの家に配っている。しかし、町が騒音対策としてやっているのはだいたいこれだけである。
 
 しかし、紙を配っても騒音が減るわけではない。要するに公共工事だから辛抱しろと言うわけである。

 もちろんこの町の職員には、役場の仕事とは住民サービスであるという意識なんかない。もしそんなものがあれば、住民に辛抱を強いるようなことはしないはずだからである。

 最近は民間の私的な工事でもちゃんと目隠しをしてから行う。それは外観上のことだけではなく、工事の騒音が外部に漏れないようにするためである。しかし、この町の公共工事ではこんなことはほとんどない。

 それどころか、配った紙に書いてあることさえ守られないのが実状だ。工事期間は適当だし、工事の開始と終了時間も業者の都合に任されている。八時半からと書いてあっても、会社は八時から仕事を始める。町は紙を配ったという一つの手続を済ませただけなのだ。
 
 最近でも、町内の北池という池に遊歩道を造る工事が行われているが、近所の人は大迷惑しているそうだ。
 
 もちろん、ここでも騒音対策は何もなされていない。工事現場に一番近い住民は夜勤で帰ってきて朝は寝ている。ところが、この家の目の前で、朝の八時頃か らパワーショベルが大きな音を立てて工事を始める。この人はとても寝ていられないだろう。夜の仕事中に眠気に襲われて怪我でもしないようにと、祈るばかり である。

 この人のささやかな抵抗は工事現場近くに駐車した自分の車の場所を、工事がしやすくなるように移動しないことだけであるが、それもむなしく、今で はこの人の家の前を工事用のダンプカーやミキサー車が轟音をたてながら行き交っている。

  (この人は結局、この遊歩道の完成後、人が家の前を通るようになっ たおかげで、家の前に車を置いておけなくなり、引つ越しをしてしまった。これを見ても、この町の公共工事が地元住民のために行われているのではないことが よく分かる)

 かくして住宅地の静かな道路は業者の金儲けのために使われる工事用道路と化してしまったのである。この住宅地が、県の条例に定められた第一種低層住宅地であることなど、何の意味もない。
 
 ところで、役場の担当者は、この人が夜勤であるかどうかには興味がないのはもちろんである。町が小さければ、きめの細かい政治ができるというが、それが嘘なのはこの例でも分かる。
 
 つまりここでは、町政とは、住民から税金と称して金を巻上げて、それを土建屋にやるためにつぎつぎと工事を考え出して、それによって住民を苦しめることなのである。
 
 住民はそれに耐えて働いて、そうして稼いだ金はまたまた町に取り上げられて自分を苦しめるために使われるのである。これを悪政といわずに何と言おう。

 見よ! 土山駅の南側に大勢の住民を立ち退かせて作られた広い道路を。駅までで行き止まりでどこにも行けな道が、こんなに広い必要があったのか。日中でも車はほとんど通らないのだ。

 次は、駅南の工場を立ち退かせて公園にして、さらに大金を使って巨大な時計台を建てるのだそうだ。これが財政赤字の町のすることだろうか。
 
 結局、この町の住民はこんな町に住んでいるのが悪いのだと諦めるしかないのか。そんな思いが広がっているためかは知らないが、この町はこのあたりでは人口増加率が最低の町である。
 
 町は住民アンケートなどといって、住民の声を聞いているつもりである。しかし、自治会を通じて集められるアンケートに誰が本音を書くだろう。かくて、役場の職員にとっては全てが実にうまく行っている町なのである。



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