自治体や自治会が屋外に設置している防災用の屋外拡声器を使った放送に悩まされている方はいないだろうか。
かつてNHKで群馬県富岡市の拡声器放送が取り上げられたことがある。住みよい環境を求めて引っ越してきたある編集者の家の前にある日拡声機が取り付けられて、朝から市の放送が始まったそうだ。
その人は市に抗議の手紙を書いて直談判におよんだが市から得られたのはゼロ解答。以後もその拡声器の放送は続いているという。
ほかに、テレビ番組に取り上げられた例としては、愛媛県の城川町の役場が朝から晩まで事あるごとに拡声器で放送するために、寝た子も起きてしまうと苦情を訴える主婦の話が紹介されたことがある。
インターネットのホームページをたどっていくと、千葉県のある町でも拡声器を使った放送が早朝から行われていて、非常に憤りを感じて裁判に訴えると言っているページがあった。
その人のページによると、拡声器放送の使用の仕方は自治体によってかなり違っているそうだ。例えば同じ千葉県でも、小見町ではそういう使用はされていないということである。また東京や神奈川では自治体による拡声器放送は規制されているということである。
それで試しに神奈川県のホームページをたどっていくと、神奈川県には「生活環境の保全等に関する条例」というのがあって、その中に拡声器騒音の項目も設けられている。同様の条例は例えば大阪府など他の府県にもあり、同じく拡声器騒音の項目が設けられている。
しかし、いずれにおいても規制の対象は商業放送などで、公共放送は対象外とされている。
また、公共放送の例としては、選挙運動の拡声器による放送が挙げてあるだけだ。では、市町村や自治会の放送は公共放送なのか。それは放送をしている側からすれば、公共放送であることに間違いはない。
したがって、結局は市町村や自治会の拡声器放送に対する規制は、各都道府県の裁量次第ということなのかもしれない。
要するに、夜型人間や夜勤の人たちに対する配慮が役場の人間にあるかどうかである。そして、東京や横浜ならば、テレビタレントや有名人など夜遅くまで仕事をしている人間がたくさんいるから、町の静寂さには配慮を払うが、早寝早起きの農民が多く住んでいる田舎では、そんなことには無頓着だということだろう。
平成五年に「環境基本法」というものが出来て、公害対策だけでなく、ひろく人間の住環境・自然環境を大切にしようという考え方が法制化されている。
この法律に基づいて、各都道府県では「環境基本条例」や前述の「生活環境保全条例」が作られてきている。その条例の目的の項の中に必ず出てくるのが「健康で文化的な生活の確保」である。
では、はたして、拡声器放送はその目的に合致しているのであろうか。
最近、よく耳にする言葉として「環境権」なる言葉がある。その中に「静謐権」というのもある。これをさらにすすめると、憲法の話になってくるらしい。
しかしそれより大事なのは、どれほど多くの人間が、この放送を迷惑に感じているかであろう。
先の富岡市の例では、反対しているのは今のところあの編集者一人で、テレビでは、町の多く人たちは放送があって便利だと言っているそうだ。
これをとって、自分の住環境に対する意識の低さだということも出来るし、お上のすることに間違いはないという昔ながらの考え方の現れだということも出来る。しかも、それは全国民について言えることであろう。
なぜなら、ホームページをたどってみても、この件で不満を訴えているページはわたしの知るかぎりわずか二つのみだったからだ。
しかし、ひょっとして本当はもっと多くの人が迷惑に思っているかもしれない。 (これを書いた後に「
拡声器騒音を考える会のホームページ」があるのを発見した。わたしの推測は間違いではなかったようだ)
例えば、自治会活動には批判が多く、加入していない人もたくさんいる。それなのに、加入していない人の耳にも届く、強制力のある拡声器放送を使うのは、おかしいと思う人もいるはずだ。
では、一体、どういう地方のどういう方が迷惑に思っているのだろうか。そう思ってこのページを開設した。
同様の不満を持っている方がもしおられたら、わたしにメールをいただければ幸いである。逐次、このページで紹介したいし、数が多ければそれだけ力になるからである。