Libanius - Declamatio XXII
リバニオス『模擬弁論集』22(旧版14)
ピリッポスはデモステネスの身柄を要求した。デモステネスは哀れみの神の祭壇に避難したが、そこから引きはがされてピリッポスに引き渡された。その後、ピリッポスから解放されたデモステネスはアテナイ人に祭壇を廃止するように提案して弁論する。
デモステネスの演説
アネナイ人の皆さん、私は前代未聞の体験をいたしました。私は自分を救ってくれると期待した人たちによって敵の手に引き渡されたのちに、私がいつも悩ませ続けてきた人の手でこの私が救われたのであります。私がここに現れたのは、一つには、自分の祖国を以前と同じ様に愛しているからであります。私はこれより酷い体験をしたとしても、自分の愛国心を捨てることはできないでしょう。さらに、私は恐らく皆さんにとって重荷であり私の身にとっては危険なこの政治から去る決心をしたからであります。
このような決心をした私が皆さんのもとにやってきたのは、最後にただ一つ次のことを提案するためであります。皆さんがこの提案を受け入れるなら、皆さんには大きな名声への道が得られるでしょう。しかし、これを受け入れない場合には、今の恥辱を増大してこの町に固定させることになることでしょう。その提案とはこの町の祭壇を廃止することであります。皆さんが私に対して行ったことによって、皆さんはこの祭壇は無意味なものにしてしまったからなのです。
[3] εἰ μὲν οὖν ἐφρόντιζον τῶν τῷ δήμῳ συμφερόντων(有益な) οἱ φάσκοντες ὑμᾶς φιλεῖν, εὐθὺς ἂν μετὰ(後で) τὴν ἐμὴν παράδοσιν(引き渡し), ἣν πεποίησθε τὴν πρὸς τὸν βωμὸν αἰδῶ(敬意) ῥᾳδίως ἀνελόντες, ἔλεγον ἂν τούτους τοὺς λόγους οὓς νῦν ἀκούσεσθε παρ' ἐμοῦ καὶ τὸν βωμὸν ἀνασπᾶν(倒す) ἐκέλευον, ὡς ἂν οὐ καλῶς ἔχον ὑμῖν τὸν αὐτὸν(祭壇) θυσίαις(犠牲式) μὲν τιμᾶν, τῷ δὲ τοὺς ἱκέτας(嘆願者) ἀποσπᾶν(分、引き剥がす) ἀτιμάζειν·皆さんの友人だと標榜する人たちが、もし民衆の皆さんの利益を考える人たちなら、皆さんが祭壇への敬意をやすやすと捨て去って私を引き渡したそのすぐあとで、今から私が皆さんにするような話をして、祭壇を引き倒せと命じたはずなのです。祭壇を儀式で敬いながら嘆願者をそこから引き剥がしてその祭壇を貶めたことは皆さんにとって不名誉なことだからです。
ἐπεὶ δὲ τουτὶ μὲν ὑπὸ τούτων τῶν χρηστῶν(良い) ὠλιγώρηται(完、軽視される) τῶν μεγάλας ὑμῖν ὀφειλόντων(借りがある) χάριτας(感謝) ἀνθ' ὧν(〜ために) αὐτοῖς ὅ τι βούλονται ποιεῖν ἐπετρέψατε(許す) καὶ ζῆν ἐπ' ἐξουσίας(自由) ἁπάσης, ἔδει δὲ καὶ τὴν ὑπὲρ τούτου γνώμην μετὰ(にならって) πολλῶν ὧν πρότερον δεδήλωκα παρ' ἐμοῦ προτεθῆναι, οὐχ ἡδέως μὲν ἐπὶ τὸ βῆμα(演壇) τοῦτο ἀναβὰς(登る) τὸ πολλὴν μέν μου δεξάμενον καὶ συνεχῆ(連続した) πολιτείαν, ἀμοιβὴν(お返し) δέ μοι τοιαύτην ἐνηνοχὸς(もたらす) ὁποίαν ἴστε, τοσοῦτον[λόγον] δ' οὖν ὑπομενῶ(あえて〜する) δημηγορῆσαι(演説する) καὶ διδάξαι(教える) τὴν πόλιν ὡς ἀμείνων ἂν εἴη τὸν βωμὸν ἀνελοῦσα.しかし、この善良な人たちはこのことをなおざりにしたのです。この人たちは皆さんに自由に生きることを許されて、やりたいようにさせてもらい、皆さんに大恩ある立場にあるにもかかわらず、そうしなかったのであります。その結果、祭壇についてのこの提案も、すでに明らかにしたこれまでの多くの提案と同じように、私が公表せざるをえなくなったのです。この演壇に私は喜んで登ったのではありません。長い私の政治人生を受け入れてくれたこの演壇も、皆さんがご存知のようなあんな報いしかくれなかったからです。しかし、私は皆さんの前であえてこれだけは演説して、この町にとってあの祭壇を廃止するほうがどれほどよいかをお話しするつもりであります。
[4] Καίτοι(しかし), μὰ τὴν Ἀθηνᾶν(アテネ女神), οὐδ' εἰ πάντες οἱ μάντεις(預言者) προὔλεγον(予言) ὡς ἐγώ ποτε ταῦτα ἐν Ἀθηναίοις φθέγξομαι καὶ τοιαῦτα ἀφήσει ῥήματα Δημοσθένης, οὐκ ἄν ποτε ἐπίστευσα(信じる) λέγουσι. διὰ τί; ὅτι οὐ τῆς ἐμῆς, ὦ Ἀθηναῖοι, προαιρέσεως(信念) οἱ λόγοι, ἀλλ' ἑτέρων μὲν ἦν ἐκεῖνα, τὸ μὴ μεμνῆσθαι τῶν προγόνων(祖先) μηδὲ μεμνῆσθαι τοῦ φρονήματος(偉大さ) μηδὲ μιμεῖσθαι τοὺς πατέρας, ἑτέρους(他の人になれ) δὲ γενέσθαι, ἐγὼ δὲ πᾶν τοὐναντίον(副) εἰς ἐκείνους βλέπειν(みつめる) ἠξίουν(要求する) κἀκείνους ποιεῖσθαι παράδειγμα τοῦ βίου καὶ μὴ λιπεῖν τὴν παραδοθεῖσαν τάξιν(秩序).しかしながら、アテネ女神にかけて、私がアテナイ人にこんな話をするだろう、またデモステネスはこんな言葉を口にするだろうと、予言者たちが全員予言したとしても、私は彼らの言葉を信じなかったでありましょう。それはなぜでしょうか。アテナイ人の皆さん、それはこんなことを提案するのは私の信念に反するからであります。祖先のことを忘れて、精神の偉大さを忘れて、父祖たちの真似をやめて別のやり方をしろなどと言うのは、ほかの人たちのすることだからです。私はそれとは正反対に、皆さんに祖先のことをよく見て、祖先を人生の手本として、伝統的な立場を捨てない事を要求してきたからです。
[5] καί που καὶ ἐπιπλήττων(叱る) ὑμῖν ὁ πάντα ἐγὼ θρασὺς εἶπόν τι καὶ τοιοῦτον[λόγον]· ἐξέστητε, ὦ Ἀθηναῖοι, τῆς ὑποθέσεως(原則) καὶ προσέθηκα(付け加えた) τὴν περὶ τὰς ἐξόδους(遠征、行進) ὑμῶν ἀργίαν(怠惰), τουτὶ γὰρ ἑώρων οὐχ ἥκιστα τὸ μέρος τῇ πόλει κατημελημένον(軽視する), ὑπὲρ δὲ τῶν εἰς τὸν βωμὸν τουτονὶ τιμῶν(名) ὡς κατερρᾳθυμημένων οὐδεπώποτε ἐπιτιμήσας(非難する) οἶδα.私はかつて勇気を出して皆さんを叱りつけて、「アテナイ人の皆さん、あなた達は原則から離れている」とそんなことを言ってきました。それに加えて、私はあなた達が出征したがらないことを非難しました。その仕事をこの国はひどく軽視していると思ったからです。しかし、私はこの祭壇に対する敬意を皆さんがぞんざいにしていると批判したことはけっしてなかったのです。
οὐδὲ γὰρ ἑώρων(見る) τοιοῦτον οὐδὲν περὶ αὐτὸν συμβαῖνον(起きる), ἀλλὰ καίτοι τἄλλα πολὺ τοῦ τῶν προγόνων ἀφεστηκότες(離れる) τρόπου καὶ τὴν ἐν τοῖς θεάτροις ἡδονὴν ἔμπροσθεν(前に) τῆς ὑπὲρ τῶν Ἑλλήνων προνοίας(配慮) πεποιημένοι τοὺς περὶ τοῦτον(祭壇) νόμους ἀκριβῶς(厳密に) ἐτηρήσατε(守る) καλῶς εἰδότες ὅτι τῇ πόλει δόξαν(名声) οὐ τὸ τοὺς ἐχθροὺς ἐν γῇ καὶ θαλάττῃ δύνασθαι νικᾶν ἤνεγκε(もたらす) μᾶλλον ἢ τὸ φιλανθρώπως διακεῖσθαι(状態である) τὴν γνώμην καὶ πρὸς οἶκτον(同情) ἔχειν ἑτοίμως(急いで) καὶ τὸν Ἔλεον(哀れみ) ἐν τοῖς θεοῖς ἀριθμεῖν(数える).なぜなら、私は祭壇に関してそんなかことが起きたのを見たことがないからです。実際、皆さんは、他のことでは先祖のやり方から大きく離れて、ギリシアに対する配慮よりも劇場の楽しみを優先させたりしても、祭壇についての決まりは厳密に守ってきたのです。というのは、陸と海で敵に勝利できることより、むしろこの国の人たちの人情が博愛的で同情心に厚いことや、哀れみを神々の中に数えていることの方がこの国に名声をもたらしてきたのは、皆さんもよくご存知だからです。
[6] Πόθεν οὖν ἐπὶ τοὺς παρόντας ἀφῖγμαι λόγους; Ἔπεμψε Φίλιππος βουλόμενός με παρ' ὑμῶν λαβεῖν, πρᾶγμα εἰκὸς(当然の) ποιῶν, τὸν ὑπὲρ ὑμῶν ἀντιτεταγμένον(対立した) αὐτῷ καὶ πολλῶν αὐτὸν ἐκκεκρουκότα(押し返す) λιμένων(港), πόλεων, τόπων καὶ τὸν δῆμον οὐκ ἐῶντα(許す) καθεύδειν(休む) ὑποχείριον(手下) ἐπιθυμῶν ἔχειν.私はどうしてこの演説をすることになったのでしょうか。ピリッポスが私を皆さんの手から奪おうと望んで使節を送ってきた。ここまでは彼がやりそうなことなのです。なにせ私は皆さんのために彼と対立して、多くの港、多くの町、多くの場所から彼を追い返して、民衆に惰眠をむさぼることを許さなかったのですから、そんな私を彼が手元に捕らえておきたいと思うのは当然のことだからです。
τῷ μὲν οὖν τοιαύτας ὡς ὑμᾶς φοιτᾶν πρεσβείας(使節) θαυμαστῶς ὡς ἤλγουν(苦しむ), εἶχον δὲ ὅτῳ καὶ ἡσθείην(楽しみの材料) ἂν παρ' αὐτῶν. μαρτυρία(証人) γὰρ δήπου τοῦτό γε σαφὴς ἐμὲ μάλιστα τῶν ἐν τῇ πόλει ταῖς ἐπιθυμίαις ἐμποδίζειν(邪魔をする) ἐκείνου. τὸ γὰρ ‹ἐμὲ› μόνον ἐξαιτεῖν(要求する) δηλοῦντος(属) ἦν ὡς οἱ μὲν αὐτῷ συμπράττουσιν, οἱ δ' οὐ σφόδρα λυποῦσι, Δημοσθένης δέ ἐστιν ὁ μεγάλων καὶ πολλῶν ὀφείλων(負う) δίκην(裁判、罰) Μακεδόσιν.ですから、皆さんのもとにそのような使節が行き来したことに私は大いに苦しみましたが、その使節から楽しみを得ることもできたのです。それは私がこの国の人たちの中で誰よりも彼の野望を妨害していることの明白な証拠だからです。なぜなら、彼が私の身柄だけを要求するということは、ある人は彼に協力し、ある人はそれほど困らせていないなかで、デモステネスだけはマケドニア人から多大な罰を受けるべき人間であることを証明しているからです。
[7] ἐλογιζόμην(計算する) δὴ πρὸς ἐμαυτόν· ὦ Δημόσθενες, τὸν μὲν κίνδυνον ὁρᾷς καὶ ἐπὶ τὸ σῶμα τὸ σὸν ἥκουσιν(来る) οὗτοι(使節). τί δὴ διανοῇ δρᾶν; λόγων μὲν ἀφθόνων(豊かな) εὐπορεῖς(充分持っている), ἐπεὶ καὶ τοῖς ἰδιώταις(素人) περὶ μόνου τούτου τοῦ πράγματος ῥᾴδιον ὡς πλεῖστα καὶ δικαιότατα λέγειν, ὅτι, ὦ ἄνδρες Ἀθηναῖοι, εἰ μὲν ἴστε ποτὲ τοῦτο ἐν τῇδε τῇ πόλει γεγονὸς(完) καί τις ἔχει ψήφισμα(決議) ἀναγνῶναι(読み上げる), καθ' ὃ πολίτης ἢ ξένος ἢ μέτοικος ἐξεδόθη παρ' ὑμῶν τοῖς ἐξαιτοῦσιν ἐχθροῖς, οὐ καλὸν μὲν πονηροῖς(悪い) παραδείγμασιν ἀκολουθεῖν(従う), γραφέσθω δ' οὖν καὶ πραττέσθω καὶ νῦν παραπλήσια(そのような事) καὶ μηδεμία βοήθεια τοῖς κινδυνεύουσιν ἔστω, εἰ δὲ νόμον παρειλήφατε παρὰ τῶν πατέρων(先祖) ἔργῳ κεκυρωμένον διὰ μηδένα φόβον προέσθαι(捨てる) τὸ δίκαιον, μηδὲ ἐμὲ νῦν ἐκδῶτε.そして、私は一人でこう考えました。ああ、デモステネスよ、お前の目の前に危険が見えている。彼らはお前の身柄を求めてやってきた。どうするつもりなのだ。お前には言葉が充分にある。素人演説家でさえこの事だけについてなら多くのことを正しく語ることは容易だろう。つまり、「アテナイ人たちよ、もしこんなことがこの国で過去に行われたのを皆さんが知っていて、市民なり外国人なり居留民が皆さんのもとから敵の要求で引き渡されたときの決議を読み上げることが出来る人がいるなら、過去の間違った前例に従うのは良いことではないとしても、今からそのようなことを提案してから実行に移して、危機にある人たちをいっさい助けないことにすればよいしょう。しかし、もし皆さんが、いかなる恐怖によっても正義を捨てるべきではないとする父祖たちの法、彼らが行動によってその正しさを実証してきた法を、皆さんが引き継いでおられるならば、いま私を引き渡さないでもらいたい」と。
[8] Εἶχεν(未完 出来る) ἄν τις λέγειν καὶ τὰς ὑπὲρ τῶν ἠδικηκότων ὑμᾶς στρατείας(軍隊の派遣), τὰς μὲν ναυτικάς, τὰς δὲ πεζῇ(陸の), τοῦτο μὲν τὴν ὑπὲρ Θηβαίων εἰς Ἁλίαρτον, τοῦτο δὲ τὴν ὑπὲρ Κορινθίων εἰς Κόρινθον, οἳ μεγίστων ὑμῖν ὀφείλοντες δίκας τοῖς ὑμετέροις κινδύνοις ἐσώζοντο. πολὺ τοίνυν τούτου λαμπρότερον τὸ καὶ Λακεδαιμονίους τῶν αὐτῶν τυχεῖν(得る), δι' οὓς ἐδουλεύσατε(奴隷となる) μὲν τυράννοις τριάκοντα, τὰς δὲ ναῦς ἀφῃρέθητε(奪われる), τὰ τείχη(壁) δὲ κατηνέγκατε(壊す). τί δὴ τὸ πεῖσαν(ア分中) ὑμᾶς τοιούτοις βοηθεῖν; οὐδὲν πλὴν τὸ ἐλεεῖν(哀れむ) ἐπίστασθαι. τοῦ γὰρ ἱκετεύοντος ἀφέντες(やめる) ἐξετάζειν(吟味する) τὸν τρόπον(性格) αὐτὸ ψιλὸν(その事だけ) αἰδεῖσθε(不完2pl).また、皆さんが自分たちに害をなした人たちのために、海軍や陸軍を送ったことに言及することもできたでしょう。皆さんは、テーバイ人のためにボイオティアのハリアルトスへ、コリント人のためにコリントへ軍隊を送って、皆さんから罰を受けるはずの彼らを自ら危険を冒して救ったのですから。さらになお輝かしいことには、皆さんはスパルタのために三十人僣主の奴隷とされ、海軍を失い、城壁を壊すことになったにもかかわらず、彼らのために軍を送ったのですから。皆さんがこんな人たちを助ける気になったのはどうしてでしょうか。それはまさに皆さんが哀れみを知る人たちであるからに他なりません。というのは、皆さんは助けを求める人がどんな人間かを吟味することなく、彼らの願いそのものを尊重してきたからなのです。
[9] Ἐμοὶ τοίνυν, ὦ Ἀθηναῖοι, καὶ ταῦτα καὶ πλείω τούτων ‹καὶ› πολλῷ δικαιότερα λέγειν ὑπῆρξεν ἂν ἐξετάζοντι(思い出す) τίς ποτε ἐγενόμην πρὸς ὑμᾶς τε καὶ τὸν ἐξαιτοῦντα. τίνος οὖν ποτε εἵνεκα τοῦτο οὐκ ἐποίουν οὐδὲ τῇ συνήθει(慣れた) παρρησίᾳ(言論の自由) πρὸς τὸν δῆμον ἐχρώμην(使う) δεικνὺς ἐμαυτὸν αἰτίας(罪) τε καθαρὸν(汚れのない) ἁπάσης καὶ σωτηρίας ἄξιον; ὅτι κἀνταῦθα περὶ πολλοῦ τὸ τῆς πόλεως ἐποιούμην.アテナイ人の皆さん、私が皆さんにとってどんな人間だったか、私の身柄を要求する人にとって私がどんな人間だったかを思えば、私はこれよりももっと多くのもっと正当な要求を皆さんにすることも出来たでしょう。どうして私はそうしなかったのでしょうか。どうして私は大衆に向かって得意の慣れ親しんだ言論を使って、自分がどんな罪の汚れもない人間であり、救済に値する人間であることを示さなかったのでしょうか。それは、こんな時でさえも私がこの国のことを第一に考えていたからなのです。
ἵνα γὰρ μὴ δοκῆτε λόγοις πεισθέντες ῥήτορος, ἀλλὰ φόβῳ τῶν θεῶν κωλυθέντες(妨げる) ἄπρακτον(手ぶらで) ἀποπέμψαι(送り返す) τὴν πρεσβείαν μηδ' ὑπολίπητε μηδεμίαν τῷ Φιλίππῳ πρόφασιν(口実) εἰς τὸ μέμφεσθαι(非難) τὸν δῆμον, τὸν βωμὸν ἀντέταξα(対置) τοῖς Μακεδόνων λόγοις καὶ μᾶλλον εἱλόμην ἀνάξιον(ふさわしくない) ἐμαυτοῦ σχῆμα(態度) περιθέσθαι(身につける) καὶ καθῆσθαι πρὸς ἱεροῖς ἱκέτης ἢ δοῦναι τοῖς τἀκείνου(ピリッポス) φρονοῦσιν(支持者) ἐπιτιμᾶν(批判) ὑμῖν.それは、皆さんが弁論家の演説に説得されたからではなく、神への恐れに駆られて、使節を手ぶらで返したと思われるようにするためだったのであり、皆さんがピリッポスに民衆を非難するどんな口実も与えないためだったのです。そのためにこそ、私はマケドニア人の言い分に対抗する手段としてあの祭壇を選んだのであり、また、この国の親ピリッポスの人たちに皆さんを非難する機会を与えるよりは、あの神聖な場所に嘆願者として座って、自分の惨めな姿を人々の目にさらすことを私は選んだのであります。
[10] ἐγὼ μὲν δὴ τούτοις τοῖς λογισμοῖς ἐπὶ τὸν βωμὸν ἔδραμον καὶ παραχρῆμα(副、すぐに) πολλοὶ περιειστήκεισαν ἐπιτήδειοι(友人) καὶ συγγενεῖς, πάντες, ὦ Ἀθηναῖοι, δακρύοντες ὁρῶντες οἵῳ τρόπῳ Δημοσθένης Ἀθήνησιν(アテナイで) ἐχθρῶν διαφεύγει χεῖρας, ἔμελλον δὲ ἄρα μηδὲ οὕτω διαφεύξεσθαι. τοσαύτη τις ἦν ὑπερβολὴ(過度) τῆς ἐμῆς δυστυχίας. ὡς γὰρ εἶπον μὲν οἱ πρέσβεις ὑπὲρ ὧν ἧκον, συνεῖπον δὲ αὐτοῖς οἱ πολλὰ δὴ συνειρηκότες(支持する) Μακεδόσι, τῶν δὲ ταὐτά(同じ) μοι φρονούντων ὁ φόβος ἀφῃρεῖτο τὴν φωνήν, ἤγγελλε δέ τις εἰς τὸν δῆμον Δημοσθένην τὸν Παιανιέα καταπεφευγέναι πρὸς τὸν Ἐλέου βωμόν,私はこのようなことを考えて祭壇に走ると、たちまちのうちに多くの友人たちや親類たちが私を取り囲みました。アテナイ人の皆さん、彼らはアテナイのデモステネスがこんなやり方で敵の手から逃れられるのか、みんな涙を流しながら見守っていたのです。しかし、私はこんなやり方では敵の手から逃がれることは出来なかったのです。私は並外れた不運に見舞われたからです。というのは、使節たちは自分たちがアテナイに来た理由を話して、親マケドニアの人たちが彼らに賛意を述べると、私に共鳴していた人たちは恐怖に声を失うとともに、誰かがパイアニエウス区のデモステネスは哀れみの神の祭壇に逃れたと民会に伝えました。
ἐψηφίσασθε, ὦ Ἀθηναῖοι, τὸ γενναῖον(素晴らしい) ἐκεῖνο ψήφισμα μάταιον εἶναι τὴν ἱκετείαν, λῆρον(たわごと) τὴν τοιαύτην ἐπικουρίαν(援助), γέλωτα(笑) τὸν περὶ τοῦ βωμοῦ νόμον. ταῦτα γὰρ πάντα ἐνῆν(未完3pl ἔνειμι) ἐν τῷ δεῖν ἀποσπᾶν(引き離す) καὶ διδόναι τοῖς βουλομένοις λαβεῖν.すると、アテナイ人の皆さん、皆さんは次のような素晴らしい決議を採択したのです。すなわち、嘆願は無意味であり、そんな所に逃げ込むのはたわごとであり、祭壇に関する法律はお笑い草であると。これらのすべての結果、嘆願者は引き離して、望む人に捕らえさせよということになったのです。
[11] ἦλθον οἱ τοξόται(市警察) τρέχοντες ἀπὸ τῆς ἐκκλησίας, εἶδόν με ἐπὶ τοῦ βωμοῦ καθήμενον, ἔκλαυσαν πρότερον, εἶτ' ἀπήγγειλαν ἃ οὐκ ἂν ἠβούλοντο· ἀνάστα, ὦ Δημόσθενες, καὶ τοῖς πρέσβεσι δεδεμένος ἕπου. ταυτὶ γὰρ Ἀθηναίοις ἔδοξεν. ἀνέστην, ὑπήκουσα(従う) στένων ἐπ' ἐμαυτοῦ πολλὰ τὸν οὐκ ἔτ' ὠφελεῖν(助ける) τοὺς ἱκετεύοντας ἔχοντα βωμόν. οἱ δὲ περιβαλόντες δεσμοῖς ἀπῆγον ἐγκεκαλυμμένον(恥), οὐ γὰρ ἔφερον(耐える) βλέπειν εἰς τὰς Ἁρμοδίου καὶ Ἀριστογείτονος εἰκόνας οὐδ' εἰς τὸ βουλευτήριον οὐδ' εἰς τὸ Μητρῷον, τὰ χωρία τῶν ἐμῶν λόγων καὶ ψηφισμάτων.議会から警察官(スキタイの弓兵)たちが走りながらやって来て、私が祭壇に座っているのを見つけると、まず嘆き声を上げて、次に出来れば言いたくないことを告げたのです。「立て、デモステネス、この使節の人たちからいましめを受けて彼らに従われよ。これがアテナイ人の決定である」と。私は立ちあがって、もはや嘆願者を助ける力もない祭壇のことを一人でおおいに嘆きながら、命令に従いました。使節の人たちはうつむいた私に縄を掛けて連れ去りました。私はハルモディオスとアリストゲイトンの像も、議会も、キュベレーの神殿も見ることに耐えられなかったのです。それは私が演説をして数々の提案をした場所だったからです。
[12] τοῦ λόγου(噂) δὲ προεκδραμόντος μὲν τοῦ περὶ τῆς ἱκετείας, οὔπω δὲ ἱκανῶς πεπιστευμένου προσιόντες μοι Θεσπιέων(テスピアイ) τινὲς καὶ Πλαταιέων(プラタイア), δι' ὧν ἐπορευόμην, ὀδυρόμενοί(嘆く) τε καὶ προπέμποντες(付きそう) καὶ τὰ ἄλλα δὴ τὰ τῶν φίλων ποιοῦντες τελευτῶντες(最後に) ἠρώτων(問う), εἰ ταῦτα ὄντως(本当に) ἀπὸ τοῦ βωμοῦ. ἐγὼ δὲ ἀρνεῖσθαι(否定) μὲν οὐκ εἶχον, ὁμολογεῖν δὲ οὐκ ἤθελον.私が嘆願者になって信じられないことが起こったという噂は既に広まっていて、私が通る道沿いにあるテスピアイやプラタイタの人たち(=ボイオティア)が近寄ってきて、私のことを嘆いて、友人のように私に付き添って、最後に「あなたは本当に祭壇から引き剥がされて来たのですか」と尋ねたのです。私は認めたくありませんでしたが、否定することはできませんでした。
ἤκουσά τι τοιοῦτον καὶ παρὰ Φωκέων γερόντων, οὗτοι γὰρ ἐν Φωκίδι μόνοι διὰ τοὺς ἐν ταῖς ὑποσχέσεσι(f.約束) λαμπρούς(見事な), οὓς ἐγὼ διελέγχων(論破) ἐλύπουν(悲しませる) τοὺς ἡδέως ἐξαπατωμένους(騙された). Θετταλοί γε μὴν καὶ κατεγέλων(不完3複) ὡς ἂν ὑπ' ἐμοῦ πολλάκις κακῶς ἀκηκοότες(完分) ἀντὶ τῆς προδοσίας ἣν προὔδοσαν(引き渡す) τὴν τῶν Ἑλλήνων ἐλευθερίαν.私はポキス(フォキス)の老人たちからもそのような言葉をかけられました。空約束の名人(=ピリッポス)のせいでいまではポキスには老人しかいないのです。彼の嘘を暴いて彼に騙されて喜んでいた人たちの悲しませたの私だったのです(前348年ポキス戦争)。いっぽう、テッサリアの人たちは私のことをあざ笑いました。彼らの裏切りのせいで、ギリシアの自由が失われたと、私から何度も悪口を言われていたからです。
[13] ἐγὼ δὲ τοῖς μὲν φίλοις συνωδυρόμην(嘆く), τοὺς δυσμενεῖς(敵意のある) δ' ὁρῶν κατεδυόμην(隠れた), οὐχ ὡς ἄν τις ἀδικῶν, ποῖον γὰρ ἀδίκημα πολιτεύεσθαι(政治をする) μετ' ἀνδρείας(勇気); ἀλλ' ὡς ὑμῶν οὐκέθ' ὁμοίων ὄντων. ἐπεὶ δὲ ὡς τὸν Φίλιππον ἤλθομεν, ἃ μὲν πρὸ τῶν βασιλείων ἤκουον(聞く) παρὰ τῶν ξένων καὶ πεζεταίρων(歩兵) τωθαζόντων(からかう) καὶ κροτούντων(打つ) καὶ γεγηθότων(楽しむ) ὡς ἂν αὐτὰς ἐχόντων τὰς Ἀθήνας, τίς ἂν διηγήσασθαι(描写) δύναιτο;私は友人を見つけは悲しみを共にし、敵意ある人たちを見つけては身を隠しました。それは自分が罪人になったからというのではありません。勇気を持って政治活動をすることの何が罪だというのでしょうか。むしろ、皆さんがもはや本来の姿を失ってしまったからなのです。私たちはピリッポスのもとに到着したとき、王宮の前には外国の傭兵たちがいて、彼らはまさにアテナイを手に入れたかのように、私をあざけり、手を打ち鳴らして喜ぶのが私の耳に聞こえましたが、それを誰が詳しく語れるでしょう。
ἀλλ' ἐπειδὴ σεμνὸς σεμνῶς ἐκάθητο Φίλιππος γέμων(満ちて) χαρᾶς καὶ δοῦλον ἔχων ὃν οὐκ ἠδυνήθη(出来た) πρίασθαι(買う) καὶ διὰ τῶν δορυφόρων(近衛兵) εἰσηγόμην, τοὺς μὲν ἀπέστησέ μου τοῦ σώματος τοὺς ἐπικειμένους, ἐμὲ δὲ εἰς αὑτὸν βλέψαι κελεύσας ἤρετο τί παθὼν ἐγὼ δεινὸν ὑπὸ τῆς οἰκίας τῆς αὑτοῦ τοσαῦτα αὑτὸν ἀνιάσαιμι(悩ます) παροξύνων(あおる) τὸν δῆμον καὶ δυνάμεις(兵力) ἐκπέμπων καὶ παραινῶν(促す) τὴν Μακεδονίαν λῃστεύειν(略奪).いっぽう、ピリッポスが重々しく玉座に座ったとき、彼は金で買えなかった奴隷を手に入れてご満悦でした。私が近衛兵に導かれて部屋に入ると、ピリッポスは私の回りにいた者たちを近くから遠ざけて、自分の方を見るように私に命じました。そして、「お前はわが王家からどんなひどい目にあったから、兵力を送り出すように大衆を煽り立てて、マケドニアを略奪するように促して、私をあんなに困らせたのかね」と尋ねました。
[14] ἐγὼ δὲ οὐδὲν ὑποπτήξας(頭を下げる) οὐδ' ὑπὸ τοῦ καιροῦ(時季) ταπεινωθείς(へりくだる), οὐχ ὡς ἐκδεδομένος, ἀλλ' ὡς ἄν τις πρεσβεύων(使節), ἀπὸ τῆς συνήθους(慣れた) διελεγόμην(会話) παρρησίας(言論の自由) ὅτι πᾶς εὖ φρονῶν(賢明), ὦ Φίλιππε, καὶ τὰ δίκαια ποιῶν τὴν αὑτοῦ πατρίδα φιλεῖ. καὶ ὥσπερ σὺ ζῇς(生きている) ἐν τοῖς ὅπλοις(武器) ἐπὶ τῷ μείζω ποιῆσαι τὴν βασιλείαν(王権), οὕτως οὐδὲν θαυμαστὸν τὰς Ἀθήνας τὸν Ἀθηναῖον φρουρεῖν(守る).私は少しも怯むことなく、この状況に気落ちすることもなく、引き渡された囚人ではなく使節として、慣れ親しんだ言論を使って答えました。「ピリッポスよ、賢明な人はみんな自分の祖国を愛して正義をなすものなのです。あなたが戦いの中に暮らして王国を拡大しようとするように、アテナイ人がアテナイを守ろうとするのは何も不思議なことではないのです。
οὐδὲ γὰρ ἐκεῖνό γ' ἂν εἴποις ὅτι μικρὸν φρονοῦσαν τὴν πόλιν παραλαβὼν(聞き知る) ἔπειθον τάξεως(ランク) οὐ προσηκούσης(適切な) ὀρέγεσθαι(熱望), ἀλλ' οἶσθα δήπου μαθὼν τὸν Μαραθῶνα, τὴν Σαλαμῖνα, τὸ Ἀρτεμίσιον, τὰς Πλαταιάς, τὴν Μυκάλην, τὴν Κύπρον, οὓς ἔστησεν ὅρους(境界) βασιλεῖ(与), καὶ μυρία(無数) ἂν ἔχοιμί σοι διελθεῖν, ὦ Φίλιππε, μεστὸς(いっぱい) ὢν ἐγὼ διηγήσεων(陳述), καὶ διαδεξάμενος βῆμα(演壇) ‹γέμον› σεμνῶν καὶ καλῶν λόγων ἐπειρώμην(試す), ὁμολογῶ(認める), μὴ λείπεσθαι(負けないように) τῶν παλαιῶν ῥητόρων.「わたしは志の低い国をとらえて分不相応な地位を求めるように説得しているとは、あなたには言わせませんよ。あなたもよくご存知のように、マラトン、サラミス、プラタイア、ミュカレー、キプロスはアテナイがペルシア王に対して敷いた境界線なのです。ピリッポスよ、ほかにも言えることはいくらでもあるのです。話の種はいくらでもあるのですから。私が演壇を引き継いだとき、そこは厳かで美しい演説に満ちていました。私が歴代の弁論家たちに遅れを取らないようにしたことは認めましょう」と。
[15] καὶ περὶ τῆς αἰτίας δέ, ὦ Ἀθηναῖοι, τῆς πολλῆς ταύτης, ὡς ἄρα ἐγὼ πόλεμον ἐποίουν ἐξὸν εἰρήνην ἄγειν, εἶπον καὶ τὰ πράγματα ἐξήτασα(吟味) καὶ διορίσας τὸν ἀμυνόμενον(防衛) ἀπὸ τοῦ κινοῦντος πόλεμον οὐδαμοῦ λύων εἰρήνην ἐφάνην, ἀλλ' Εὔβοια, Πελοπόννησος, τὰ πλοῖα, Μέγαρα, Ἑλλήσποντος, μικρά, μείζω, πάντα με ταύτης ἐλεύθερον ἐποίει τῆς μέμψεως.そして、アテナイ人の皆さん、私は平和を維持できるのに戦争に突き進んだという自分に対する多くの批判に言及して、事実を再吟味して、防衛戦争と侵略戦争を区別して、こちらからはけっして平和を壊すようなまねはしなかったことを明らかにしました。エウボイア、ペロポネソス、船団、メガラ、ヘレスポントス、小さいものから大きなものまで、全てについて私はそんな非難を免れているのです。
[16] ἐγὼ μὲν οὖν σιωπήσας ἤλπιζον(待つ) μάστιγας καὶ κέντρα(突き棒) καὶ πῦρ καὶ τὸ τελευταῖον, σφαγήν(殺人), ὁ δὲ μικρὸν ἐπισχών(待つ), ἀφίημί σε, φησί, καὶ ποιῶ κύριον τῆς ὅποι βούλει(2s) πορείας(道), καὶ σώζου καὶ μένε μέν, εἰ τοῦθ' ἥδιον, ἐν ταῖς ἐμαῖς πόλεσι, βάδιζε δὲ Ἀθήναζε καὶ κομίζου(戻る) τὴν οἰκείαν[γῆν], εἰ τοῦτό σοι κατὰ νοῦν. καὶ μειδιῶν(微笑む) ἅμα καὶ βλέπων εἰς τοὺς παρόντας, ἐπιμελοῦ(大切にする) δέ, φησί, καὶ τοῦ Ἐλέου βωμοῦ. παρ' ὑμῖν γάρ ἐστι τοῖς ἡμέροις(文明化した), ἡμεῖς δὲ ὠμοί τε καὶ βάρβαροι.それから私は沈黙して、鞭と突き棒と火と最後に死を覚悟しました。ところが、ピリッポスは少しするとこう言ったのです。「わしはお前を釈放する。お前の好きな道を選ぶことを許す。お前の身の安全は保証する。もしよければ私の国に留まるもよし、またそうしたければ、アテナイへの道をとって祖国に戻ってもよい」。そして彼は微笑んで、私に付き添って来た者たちに目を向けてから言った。「君たちは哀れみの神の祭壇を大切にしたまえ。なぜなら、あの祭壇のあるお前たちは文化と教養があるが、我々は粗野な蛮族だからだ」
[17] Τί δὴ τὸ τῆς μεταβολῆς(変化) αἴτιον καὶ τοῦ χάριν(何のために) ὃν ἔσπευσε(促す) λαβεῖν ἔχων ἀφῆκε, τὸ μὲν ἀκριβὲς αὐτὸς ἂν εἰδείη καὶ πρὸς ἄλλον ἂν εἴποι, τεκμαιρομένῳ(推測) δὲ πολλά, ὦ Ἀθηναῖοι, φανείη(φαίνεται明らか). καὶ γὰρ ὡς ἀπέχρησεν(ἀποχράω十分だ) αὐτῷ γενέσθαι κυρίῳ καὶ ὡς ἡττήθη τῶν δικαίων καὶ ὡς ἠλέησε(憐れむ) τὴν τύχην καὶ ὡς ἔδεισε(恐れる) τὸ τοῦ μέλλοντος ἀφανὲς(明らかでない) καὶ ὡς δόξαν μεγαλοψυχίας(寛容) ἐδίωξεν(追求) ἐχθροῦ φειδόμενος(いたわる) καὶ ὡς [ἐξῄτησε]‹ἐζήτησε› φιλανθρωπότερος νομισθῆναι τοῦ δήμου τῶν Ἀθηναίων [ζητῶν]. ἀκούομεν δὲ αὐτὸν καὶ πρὸς τὰς Ἀπολλοφάνους(アポロファネス医者) θυγατέρας ποιῆσαί τι παραπλήσιον(よく似た), ἀφεῖναι γὰρ αὐτὰς Σατύρῳ τῷ τῆς κωμῳδίας(喜劇) ὑποκριτῇ(俳優) τοῦ πατρὸς τῶν κορῶν(娘) ἀπεκτονότος(属) αὐτῷ(ピリッポスの) τὸν ἀδελφόν.この心変わりの原因は何でしょうか。自分が捕まえろと命じた人間を手に入れたのに何のために逃したのでしょうか。それは彼だけがよく知っていて人に話すことが出来ることなのです。しかし、アテナイ人の皆さん、我々も色々と推測することはできます。たとえば、彼は私を捕まえたことで満足した。あるいは、彼は正義の前に屈した。あるいは、彼は私の運命を憐れに思った。あるいは、彼は将来の不確かさを恐れた。あるいは、彼は敵をいたわることで寛大であるという名声を求めた。あるいは、彼は自分がアテナイの民会よりも情に厚いと思われようとした。しかし、我々は彼がアポロファネスの娘たちに対して似たような事をしたのを聞いています。つまり、娘たちの父親アポロファネスはピリッポスの兄を殺した人間であるにもかかわらず、彼は娘たちを喜劇俳優サテュロスに委ねたのです。
[18] Περὶ μὲν οὖν τῆς ἐμῆς σωτηρίας τοιαῦτα ἄν τις ὑπολάβοι, λελυμένος δὲ ἤδη καὶ τετυχηκὼς ἀδείας(安全) οὐκ ἂν φαίην(1s.言う) ὡς ἐβουλευσάμην ὅποι χρὴ τραπέσθαι. καίτοι παρὰ πολλοῖς τῶν Ἑλλήνων ἦσαν εὐεργεσίαι(親切) μοι κείμεναι, καὶ μετέδωκαν(分け与える) ἀσμένως(楽しく) ἄν μοι καὶ πολιτείας(市民権) καὶ γῆς καὶ τῶν ἄλλων ἀγαθῶν, ἀλλ' οὐκ ἦν ταῦτα τῆς ἐμῆς ψυχῆς, ἀλλ' εὐθὺς οἴκαδε ἠπειγόμην(ἐπείγομαι急ぐ). οὕτως ἰσχυρὸς ἔρως ἐντέτηκέ(染み付く) μοι τῆς πατρίδος καὶ οὐδ' ἡ ἔκδοσις(引き渡し) αὐτὸν(ἔρωτα祖国愛) καταπαῦσαι δύναται.私が助かったとき、次のように考えた人がいるかもしれません。「すでに解放されて安全を手にしたデモステネスは、どこへ向かうべきか決心がつかないはずだ。じっさい彼はギリシアの多くの国々に多大な貢献をしてきたので、多くの国が彼に市民権や土地やほかの様々な価値あるものを快く与えるだろう」と。しかし、私の心にあったのはそんな事ではなかったのです。私はまっすぐ祖国へ急ぎました。それほど祖国への愛情が強く私に染み付いていたのです。自分がピリッポスに引き渡されたことも私の祖国愛を止める事はできないのです。
[19] τὴν τοίνυν πορείαν ὡς μάλιστα λανθάνων(見つからない) ἐποιούμην τοῦ(目的) μὴ πάλιν(また) ὁρᾶσθαι παρὰ τῶν Ἑλλήνων μηδὲ ἀναγκάζεσθαι πικρῶν ἀκούειν καθ' ὑμῶν ῥημάτων(言葉). ἦσαν γάρ, ἦσαν οἱ παραβάλλοντες(比較する) τῇ ἐκδόσει(引き渡し) τὴν ἄφεσιν(解放), τοῖς Ἀθηναίοις τὸν Φίλιππον, τοῖς πολίταις τὸν ἐχθρόν. ἃ καὶ νῦν μὲν ἀνάγκη πολλαχοῦ λέγεσθαι τῆς Ἑλλάδος. ἐγνωσμένων γάρ, οἶμαι, καὶ τούτων κἀκείνων εἰκὸς ἑκατέρῳ γίνεσθαι τοὺς προσήκοντας λόγους. ὅπως οὖν μὴ πολλοῖς ἐντεύξομαι(未ἐντυγχάνω出会う) τοῦ βωμοῦ μεμνημένοις, εἰς ὅσον οἷόν τ' ἦν, κρύπτων ἐμαυτὸν ἐχώρουν. ἥκων τοίνυν ἓν τοῦτο ὅπερ ἔφην πολιτεύομαι πολίτευμα(政治) καὶ γράφω(提案する) τὸν [βωμόν]ἑστηκότα τηνάλλως(無駄に) ἀνατρέπειν(倒す).今回の道中では私は出来るだけ人目につかないようにしました。またギリシア人に見つかって、皆さんに対する厳しい言葉を聞かされたくなかったからです。というのは、私の引き渡しと私の解放を比べて、アテナイの人々とピリッポスを比べて、市民と敵を比べてあれこれ言う人たちが実際にいたからです。ギリシアの多くの場所でそんなことが今も言われているに違いありません。両方の出来事が知られるにつれて、きっと両者に相応しい言葉が交わされていることでしょう。私は祭壇のことを覚えている人に沢山出くわさないように、出来るだけ人目を避けて進みました。こうしていま帰ってきた私はすでに話したこの事だけのために政治に関わるのです。そして、私はあの無意味に立っている祭壇をこわすことを提案します。
[20] Εἶτα σὺ τολμᾷς, φησί(人は言う), βωμὸν ἀρχαῖον καὶ τίμιον καὶ δόξαν ἀγαθὴν ἐνηνοχότα(もたらした) τῇ πόλει τῆς εἰωθυίας(習慣の) τιμῆς(名声) ἐκβαλεῖν(捨てさせる); ἐγὼ γάρ εἰμι ὁ τοῦτο ποιῶν, ὦ Ἀθηναῖοι; ἐγὼ καταλύω(廃止する) τιμὴν κρατοῦσαν(支配的) ὁ τῇ πρὸς αὐτὸν καταφυγῇ(避難) βεβαιώσας(守った) αὐτῷ τὸν νόμον(法); εἰρωνεία ταῦτα ἔστι καὶ παιδιὰ(冗談) τῶν οὐ βουλομένων εἰδέναι δοκεῖν ὡς ἃ τοῖς ἔργοις ἤδη πέπρακται, ταῦτα νυνὶ τυγχάνει λόγου. τίς γὰρ οὐκ οἶδεν ὡς ἀπ' ἐκείνης(あの日) ἀπέρριπται(倒された) τῆς ἡμέρας(日) ὁ βωμός, ἐν ᾗ τὸν ἱκέτην οὐκέτ' εἶχεν ἐξελέσθαι(救う);すると、昔から貴重な存在であり国に名誉をもたらした祭壇に染み付いている名声をお前はあえて奪うつもりなのかと言うかもしれません。しかし、アテナイの皆さん、私がこんなことをすることになった原因なのでしょうか。この祭壇に逃れることによって法を遵守したこの私が、有力な崇拝を終わらせようとしていると言うのでしょうか。これこそ皮肉であり、事実上行われてしまったことが今言葉にされているだけなのを、気付いていると思われたくない人たちによるジョークであります。祭壇はもはや嘆願者を救うことが出来なくなったあの日に倒されていることを、誰が知らないと言うのでしょうか。
[21] φέρε γάρ, τίς ἡ τιμὴ τοῦ βωμοῦ; τὸν ἀδικούμενον ὡς αὐτὸν ἥκοντα σῶσαι. τί οὖν; ἤρκεσέ(力がある) με ῥύσασθαι; πόθεν; οὐκοῦν ὁ μὲν λίθος(石) ἕστηκε, τὸ γέρας(敬意) δὲ πέπαυται, καὶ τῷ μὲν δοκεῖν μένει, τῇ δ' ἀληθείᾳ(真実) κεκίνηται(片付ける). τὴν γὰρ ἐκ τῶν νόμων αἰδῶ(f.対) τοῖς βωμοῖς ὑπάρχουσαν ἂν ἀφέλῃς(ア2s.ἀφαιρέω取り去る), οἴχεται(ない) ὁ βωμὸς καὶ τοῦτ' ἔστιν ὃ πρὶν ἢ βωμὸς νομισθῆναι. καὶ γὰρ τὰ τῶν θεῶν ἕδη(像) τῶν ἄλλων τύπων(像) αἰδεσιμώτερα(尊敬される) ταῖς τιμαῖς, ἄνευ δὲ τούτων οὐδὲν ἀμείνω τῶν λοιπῶν ἀνδριάντων(立像) οὐδέ γε τῶν οὔπω ξεσθέντων(ξέω加工する) λίθων.さて、祭壇の名声とは何でしょうか。それはひどい目にあって祭壇にすがりに来た人を救うという名声なのです。では実際はどうでしょうか。祭壇には私を救う力があったでしょうか。どこにそんな力があるのでしょうか。もはや石が立っているだけで、それに対する敬意は消え去りました。祭壇は見かけ上は残っていますが、本当は撤去されているのです。祭壇に対して法に基づいて存在する敬意を取り除くなら、祭壇はなくなったに等しいのです。それは祭壇とはもはや思われていないのと同じなのです。神々の像が他の像より尊いのは崇拝のゆえなのです。崇拝がなくなれば神々の像は他の立像やまだ加工されてもいない石ころと何も変わらなくなるのです。
[22] οὐδεὶς ἐτόλμα πρότερον ἅπτεσθαι τῶν ἐκεῖσε καταφευγόντων. οὐδεὶς ἤκουσέ μου λέγοντος ὅτι χρὴ τοῦτον ἀνελεῖν. ἀνῄρηται(ἀναιρέω奪う) τοῖς εἰς ἐμὲ πραχθεῖσιν ἡ παρ' αὐτοῦ συμμαχία(援助). μηδ' ὁράσθω(3命受ὁράω) τοίνυν ὁ βωμός, μέχρις ἂν θεραπεύηται(崇拝する) Παναθηναίοις(パンアテネ祭) μὲν Ἀθηνᾶ(主), μυστηρίοις(秘儀) δὲ Δημήτηρ, τῇ λαμπάδι(松明) δὲ ὁ Πὰν καὶ τῶν ἄλλων ἕκαστος θεῶν τοῖς παλαιοῖς νομίμοις(慣習).以前には、祭壇のもとに逃れた人にあえて手を触れる人は誰もなく、この祭壇を取り去るべきだと私が言うのを聞いた人も誰もいなかったのです。私に対して行なわれた事によって、この祭壇から得られる援助は奪われたのです。アテネ女神がパンアテネ祭によって、デメテル神が秘儀によって、パン神が松明によって、他の各々の神が昔の習慣によって崇拝されるかぎりは、いまやこの祭壇は人々の眼の前から消え去るべきなのです。
[23] καλῶς αὐτοῖς ἑστήκασιν οἱ βωμοί, τῶν ἑορτῶν(祭) δὲ καὶ τῶν ἄλλων αὐτοῖς ἁγιστειῶν(ἁγιστεία儀式) ἀπολλυμένων μωρία(愚かさ) τοὺς βωμοὺς διαφυλάττειν(守る). ἑορτὴ τοίνυν ἔστιν Ἐλέῳ καὶ θεραπεία(崇拝) μία, τοῖς ἐκεῖσε καταφεύγουσιν εἶναι σωθῆναι, τούτου δὲ οὐκ ἔτ' ὄντος τί δεῖ βωμοῦ; ὥσπερ ἂν εἴ τινες ἀφελόμενοι τὴν ἀρχὴν τὸν στρατηγὸν εἶτ' αὐτὸν ἀξιοῖεν στρατηγὸν καλεῖν. ἀλλ' οὐδὲν ἡ προσηγορία τῶν ἔργων χωρίς.これらの神々には昔から立派な祭壇が立っています。しかし、それらの神々の祭と儀式が廃れたなら、それらの祭壇を守り続けるのは愚かなことです。そうです、哀れみの神の祭りと唯一の崇拝とは、そこに逃れてきた人々に救いがあるということです。しかし、その崇拝がもはやなくなったときには、どうして祭壇が必要でしょうか。それはたとえば、もし誰かが将軍から統治権を奪ってから、なおも彼を将軍と呼ぶに値すると考えるようなものです。しかし、現実の行為が無くなれば呼び名も無くなるのです。
[24] Τί οὖν κερδανοῦμεν, φησίν, ἀνελόντες τὸν βωμόν; διαφεύξεσθε(逃れる), ὦ Ἀθηναῖοι, τὰς νυνὶ κατηγορίας(非難) ἃς ἐκ τοῦ μὲν θεὸν ἡγεῖσθαι τὸν Ἔλεον, ἀποσπᾶν δὲ τοὺς ἱκετεύοντας ἔχετε. τουτὶ γάρ ἐστιν αὐτῶν αὑτοῖς ἐναντία ποιούντων καὶ μαχομένων, ὃ μέγιστον ἔγωγε ὀνειδῶν(非難) ἡγοῦμαι. τὸ μὲν γὰρ οὕς τις οὐχ ἡγεῖται τιμῶν ἀξίους μηδὲ [τούτους]θαυμάζειν ἀγνοίας(→) ἂν αἰτίαν(非難) λάβοι, τὸ δ' ἅ τις ἐν θεῶν ἄγει(動) τάξει(位置), πρὸς ταῦτα ἀναισχυντεῖν οὐδὲν ἀσεβείας(不敬) ἐλλείπει(不足する).祭壇を取り去ったら我々にはどんな利益があるのか、と言うかもしれません。アテナイ人の皆さん、皆さんは哀れみを神としながら、嘆願者をその祭壇から引き離したことから受けている非難から逃れられるでしょう。というのは、これは自分自身と対立矛盾したことをすることであり、これほど不名誉なことはないと私は思うからです。人が尊敬に値しないとみなす人(=デモステネス)を尊重しなくても無知のせいにできますが、人が神のように扱うもの(=祭壇)を軽々しく扱うことはまさに不敬を働くことなのです。
[25] οὐκοῦν ἐν μὲν τῷ καθάπαξ ἀνελεῖν τὸ μὴ νομίζειν ἐστὶ θεόν, ἐν δὲ τῷ τὸν βωμὸν ἐᾶν τὸ μηδ' ἃ βωμῶν ἠξιώσατε, ταῦτα ὑβρίζειν(ないがしろにする) ὀκνεῖν(恐れる). ὁρᾶτε(命) γὰρ τὸ γιγνόμενον. ἥξουσι(未ἥκω来る) παρ' ὑμᾶς τινες, ὄψονται(未ὁράω) τὸν βωμόν, εἴσονται(未οἶδα知る) τὰ γενόμενα. τούτους τί βούλεσθε περὶ ὑμῶν φρονεῖν; ὡς Ἀθηναῖοι ψεύδονται(嘘を付く) καὶ φενακίζουσι(騙す) πάντας ἀνθρώπους καὶ τοὺς ἀτυχοῦντας ἐνεδρεύουσι(待ち伏せ) καὶ τὸν Ἐλέου βωμὸν ἀντὶ θηράτρων(わな) ἔχουσιν οἷς ἐξῆν φεύγουσι(分与 逃げる) σωθῆναι, τούτους διὰ τῆς ἐλπίδος τοῦ βωμοῦ λαμβάνοντες;したがって、祭壇をきれいさっぱり取り除くことは、哀れみを神と見なさいということであり、祭壇を存続させることは、皆さんが祭壇にふさわしいと思っていたことを平気でないがしろにするということであります。皆さん、いま起きていることを見てください。皆さんのもとにやってくる人たちは、祭壇を目にして、何があったのかを知ることになるのです。皆さんは彼らにどう思われたいのでしょうか。アテナイは人類を騙す嘘つきであり、不幸な人を待ち伏せして、哀れみの祭壇を罠として、そこに逃れて救われるはずの人たちを、祭壇への希望を利用して捕まえるのだ、と思われたいのでしょうか。
[26] καὶ γὰρ εἰ μὲν οὐδεὶς ἐπ' αὐτὸν ἥξει(来る) τῶν ἐμῶν μεμνημένος, ἐπὶ τί καὶ φυλάττοιτο ἄν; εἰ δὲ ἥξουσι καὶ κερδανοῦσι καὶ σωτῆρα(救済者) ἀξιόχρεων(十分な) εὑρήσουσι, τίς ἂν ὑμῖν ὑπάρχοι λόγος περὶ τῆς ἐμῆς ἐκδόσεως; ὅτι, νὴ Δία, πονηρότατος ἐγώ τις καὶ ἥκιστα φιλανθρωπίας(人情) ἄξιος; ἢ πονηρὸς μὲν οὐ λίαν, ἄχρηστος(役立たず) δὲ ὁ βοῶν(叫ぶ) ὑπὲρ Ὀλυνθίων, ὦ Ἀθηναῖοι, καὶ πρεσβεύων ὑγιῶς(元気に) καὶ φιλοτιμίᾳ(気前よく) χορηγῶν καὶ τριηραρχῶν(三段櫂船) ἐθελοντὴς(支援者) καὶ λυόμενος αἰχμαλώτους(捕虜) καὶ θυγατέρας συνεκδιδούς(持参金を出してやる);また、もし私のことを覚えていて誰も祭壇に来なくなるなら、何のために祭壇をとっておくのでしょうか。また、もし来る人がいるとして、さらにその甲斐あって、十分な救済を得られるとしたら、私が引き渡されたことをどう説明するのでしょうか。私は最悪の人間で人情に値しない人間だからと言うのでしょうか。あるいは、私はそれほど悪人ではないが役立たずだからでしょうか。アテナイ人の皆さん、オリュントス人のために叫び(前349の演説『オリュントス情勢』を指す)、立派に使節の仕事を果たし、気前よくコロスの資金を出し、自発的に三段櫂船の資金を出し、捕虜を釈放して、娘たちに持参金を出してやったこの私が役立たずだからでしょうか。
ὁ πολλοὺς μὲν ἐλεῶν, ἐλέου δὲ οὐ τετυχηκώς; ὁ νόμοις ὠφελῶν τὸ ναυτικόν; ὁ τὰς προσόδους(歳入) αὔξων; ὁ τῇ συμμαχίᾳ προστιθείς; ὁ τῆς σιτοπομπίας(穀物運搬) φύλαξ; ὁ κηρυττόμενος; ὁ στεφανούμενος; εἴπω τι τούτων ἄμεινον; ὁ ἐξαιτούμενος; ἃ τίνι τῶν πώποτε τῷ βωμῷ χρησαμένων ὑπῆρχεν; ἃ οὐδέν με ὀνῆσαι(役立つ) δεδύνηται. τοῦτον οὖν ὑπεριδόντες(ὑπεροράω見下す) ἄλλον ἐλεήσετε(未); καὶ πῶς οὐ πολλῆς ἐμπληξίας(愚かさ);哀れみを得られなくても多くの人に哀れみをかけた人間。法に従って船の資金を援助した人間。国の歳入を増やした人間。同盟を強化した人間。穀物の運搬を見張っていた人間。伝令となった人間。冠を与えられた人間。もっとましなことを言いましょうか。ピリッポスに引き渡しを求められた人間。かつて祭壇に助けを求めた人の誰がこれらに当てはまるでしょうか。ところが、これらの事実は私には何の役にも立たなかったのです。皆さんはこんな人間を蔑ろにしながら、他の人に哀れみをかけるつもりでしょうか。どうしてこれが大きな愚かさの証ではないのでしょうか。
[27] Πολεμεῖν γὰρ ἦν ἀνάγκη, φησί, μὴ τοῦτο πεποιηκόσιν. ἐγὼ δὲ εἶχον μὲν ‹ἂν› δεικνύειν ὡς πάτριον ὑμῖν ὑπὲρ τῶν τοιούτων πολεμεῖν, καὶ πολλοὺς ἂν ἀγῶνας(戦い), εἴπερ ἐβουλόμην, ἐξηρίθμουν(数える), ἐφ' οἷς ἐν ταῖς τραγῳδίαις ἐπαινούμενοι χαίρετε, τοῦτο μὲν τὸν[ἀγῶνα] ὑπὲρ τῶν Ἡρακλειδῶν(ヘラクレスの子供たち=嘆願者) πρὸς Πελοπόννησον ὅλην(全体の) ἣν ἧκεν ἄγων(支配する) Εὐρυσθεὺς ὃς αὐτῷ(ヘラクレス本人) πράγματα(難行) παρεῖχεν(与える) Ἡρακλεῖ, τοῦτο δὲ τὸν ὑπὲρ τῶν νεκρῶν πρὸς Θηβαίους ἄνδρας ἐπηρμένους(興奮した) τῇ νίκῃ καὶ διὰ τὴν παροῦσαν τύχην τοιαῦτα ὑβρίζοντας.もしああでもしなければ戦争が起こるのは必至だった、と言うかもしれません。しかしながら、まさにこのような事のために戦うのが皆さんにとって父祖の伝統であると言うことも出来たでしょう。その気になれば私は、皆さんが悲劇作品の中で称賛されるのを喜びとした多くの戦いを列挙できるのです。たとえば、ヘラクレス本人に数々の難行を与えたエウリュステウスが支配していたペロポネソスを全部敵に回して、皆さんはヘラクレスの子供たちのために戦いました(=エウリピデス『ヘラクレスの子供たち』)。また、勝利に高揚していっときの幸運のためにあれほどの蛮行に出たテーバイ人を敵に回して、皆さんは遺体のために戦いました(=エウリピデス『救いを求める女たち(嘆願者たち)』)。
καίτοι καὶ εἰ σεμνὸς Ἡρακλῆς, ἀλλὰ τοῖς ἐκείνου παισὶν οὐδὲν περὶ ὑμᾶς οὔτε μικρὸν οὔτε μεῖζον ἐπεπόνητο. Ἄδραστος δὲ οὔτ' αὐτὸς οὔθ' ὁ τούτου πατὴρ Ταλαὸς χάριν ἦσαν οὐδεμίαν τῇ πόλει προεισενεγκόντες(προεισφέρω), ἀλλ' ἦν ταῦτα ἐλέου ψιλοῦ καὶ φιλανθρωπίας καὶ τοῦ πάσχειν τι πρὸς τοὺς ἱκετεύοντας.ヘラクレスは偉大だったにしても、彼の息子たちは皆さんのために大なり小なり何の苦行も行わなかったのです。また、アテナイはアドラストス(=テーバイ攻めの七将の一人、嘆願者)からもまたその父タラオスからもどんな恩恵も受けなかったのです。これらの戦いは純粋な哀れみと人情からであり、嘆願者に対する気持ちの表れだったのです。
[28] τί δ' Ἰνάρως(イナロス) ὁ Λίβυς(リビア人), τί δὲ Νικίας ὁ Κρής(クレタ人), τί δὲ Ὀρέστης ὁ Θετταλός; οὐ νεῶν(船) ἔτυχον ἐνθένδε(ここから) καὶ στρατοπέδων(軍隊), ἵν' ἄρχωσιν(支配する) ἄνθρωποι ξένοι(外国の) καὶ μηδὲν ὑμῖν προσήκοντες(属する); τί δ' ἦν δεινὸν ὑπὲρ Ἀθηναίου ῥήτορος ἀδόλως(正々堂々) πεπολιτευμένου δι' ὑμᾶς μισουμένου τῶν εἰωθότων τι δρᾶσαι καὶ πράξει μιᾷ τὸν δῆμον ἐξελέσθαι(ἐξαιρέω解放) τοιούτων ἐπιταγμάτων(要請) διδάξαντας(言う) ὡς οὐκ ἴστε τὰ τοιαῦτα διδόναι;リビアのイナロス(Th.1.104)、クレタのニキアス(Th.2.85)、テッサリアのオレステス(Th.1.101)はどうでしょうか。彼らは外国人で皆さんとは何の関係もないにもかかわらず、ここアテナイから艦隊や軍隊を与えられて、自分たちの支配権を確立したのではありませんか。まっとうな政治を行って皆さんのために憎まれている一人のアテナイの弁論家のために皆さんが慣習通りのことをするのが、どうして間違ったことだったでしょうか、一つの行動(=嘆願者を守る)であんな要請から大衆を解放して、そんなこと(=引き渡し要請)を実行する方法を知らないと伝えることが、どうして間違ったことだったでしょうか。
[29] ταυτὶ μὲν εἶπον ἄν, εἰ δῆλον ἦν ὡς πόλεμον ἤνεγκεν ἂν τὸ τὰ δίκαια ποιεῖν, νῦν δέ μοι δοκεῖ Φίλιππος οὐκ ἂν εἰς τοσοῦτον ἀτοπίας(異常さ) ἐλθεῖν ὥστε πολέμου ποιήσασθαι πρόφασιν τὴν τοῦ δήμου πρὸς τὸ δαιμόνιον εὐλάβειαν(畏敬). τί γὰρ ἂν καὶ πέμψας ᾐτιᾶτο(批判する); ὅτι ἀδικεῖτε, ὦ Ἀθηναῖοι, οὐ μᾶλλον ἐμὲ δεδοικότες(恐れる) ἢ τοὺς θεοὺς οὐδὲ τὴν πρὸς ἐμὲ χάριν πρὸ τῶν βωμῶν θεραπεύοντες(大切にする);もし正しいことを行なう(=嘆願者を守る)ことで戦争になるのが明らかだったら、私もそう言ったことでしょう。しかし、ピリッポスは民衆の神に対する畏敬の念を口実にして戦争をするような無茶な行動には出ないと私には思われるのです。(=もし私を守っていたら)彼は使節を送って何を批判したでしょうか。「アテナイ人よ、君たちは私よりも神々を恐れて、私の好意を得ることより祭壇を大切にするという不正を犯した」と批判したでしょうか。
[30] ἀλλ' οὐκ ἂν οὕτω ποτὲ μανικὸν(愚かな) ἐφθέγξατο ῥῆμα δύο ἐντεῦθεν ὁρῶν ζημίας(罰), τὴν[ζημίαν] μὲν γέλωτα(笑い) παρὰ τοῖς ἀνθρώποις ὀφείλειν(負う), τὴν[ζημίαν] δὲ χαλεποὺς ἀνταγωνιστὰς(敵) ἐπισπᾶσθαι(引き寄せる) τοὺς ὑβριζομένους(ないがしろにされた) θεούς, οὓς ᾔδει(過去完οἶδα) μεθ' ἡμῶν ἐπ' αὐτὸν ἥξοντας ἐν τῷ τοιούτῳ πολέμῳ.しかし、彼はそんな愚かなことは言わなかったでしょう。そんなことをすれば二つの報いを受けると見ていたからです。一つは人々の笑い物になること、もう一つは神々を蔑ろにすればその神々を厄介な敵に回すということです。このような戦いではその神々がアテナイ側について自分を攻撃しに来るということを彼はとっくに知っていたのです。
ἀλλ' οὐχ οὕτως ἔκφρων(狂った) οὐδὲ ἀνόητος(愚かな) ἐκεῖνος ἀνὴρ εἰδὼς χρήσασθαι πράγμασιν ὥστε ἑλέσθαι παραπαίειν(正気を失う) τε δοκεῖν καὶ κινεῖν ἐφ' ἑαυτὸν τοὺς κρείττονας, ἀλλ' ἀπέχρησεν(ἀποχράω十分である) ἂν αὐτῷ ‹τὸν› καὶ λοιδορούμενον(非難する) καὶ μέγαν μὲν παρ' ὑμῖν, μέγαν δὲ παρὰ τοῖς ἄλλοις Ἕλλησιν ἐλέῳ(哀れみ) σώζεσθαι καὶ δάκρυσι καὶ τῷ τῶν ἱκετευόντων κλάδῳ(オリーブの小枝). αἱ γὰρ τῶν χαλεπαινόντων(怒る人) πρὸς τοὺς λελυπηκότας(悲しませる) ὀργαὶ(激情) τῇ τῶν παροξυνάντων(怒らせる) δυστυχίᾳ λύονται(解消される).しかし、事態を利用することを知っていた彼は、正気を失っていると思われたり、自分自身に対して強い神々をけしかける方を選ぶほど、非常識でも頭が悪くもなかったのです。それどころか、彼にとっては、自分を非難する人間、アテナイと他のギリシア諸国でも力のある人間が、嘆願者の哀れみと涙とオリーブの小枝によって救われるだけで充分だったのです。というのは、自分を苦しめる人間に対して腹を立てる人の怒りは、怒らせた人間の不幸によって解消されるからです。
[31] τεκμήριον δὲ ὑμῖν ἔστω ταῦτα ἃ νῦν δέδρακε. λαβὼν γὰρ ἤδη καὶ ἔχων καὶ ὁρῶν καὶ κύριος(出来る) ὢν κατακρημνίσαι(投げ落とす) καὶ κατακόψαι(砕く) καὶ ὅ τι βούλοιτο χρήσασθαι(する) στήσας εἰς ἐμὲ τοὺς ὀφθαλμοὺς καί τι πρὸς αὑτὸν ἐνθυμηθεὶς(考える) ἀφῆκεν(ἀφίημι). ὅ μοι δοκεῖ(私が思うに) κἂν πρὸς τὴν ἱκετείαν, εἴ τις ἀπήγγειλε, δρᾶσαι. τί γὰρ ἂν πλέον ἐζήτησεν(求める) ἥττης(属 敗北) ἐχθροῦ; ὅλως δὲ ὁ τοῦ πολέμου καὶ τοῦ φόβου λόγος(議論) τὴν μὲν ‹ἐκδόσεως› αἰτίαν ἔχει, τοῦ δὲ τὸν βωμὸν ἐν τοῖς ἔμπροσθεν(以前) μένειν οὐκ ἔστιν ἀπόδειξις(証明).皆さんには彼が今したことをその証拠となるでしょう。私を捕らえて私を手中に置き私を目の前にした彼は、私を崖から突き落として切り刻んで、好きなようにすることができましたが、私に視線を据えて、一人で考えてから、私を解放したのです。もし彼が私の嘆願のことを聞いていたら、同じようにしたと私は思います。彼は敵の敗北以上の何を求めたでしょうか。要するに、戦争と恐怖についての議論が私を引き渡すことになった原因ですが、そのことは祭壇がもはや元のままの存在であることを意味しないのです。
[32] Δεῖ δὲ νῦν οὐ τοῦτο ζητεῖν, τί τὸ πεῖσαν(ア分n) ἀμελῆσαι(無視する) τῆς τιμῆς(崇拝), ἀλλ' εἰ μὴ λυσιτελεῖ (役立つ)καθάπαξ ἠφανίσθαι(完ἀφανίζω無くなる) τὸν οὐδενὸς ἄξιον. τί οὖν μέλλετε(躊躇う), ὦ Ἀθηναῖοι; τί μὴ τὴν ταχίστην[ὁδόν] ἐπ' αὐτὸν φέρεσθε(向かう); τί μὴ λακτίζοντες(蹴る) ἀνατρέπετε; μᾶλλον δέ, τί μὴ καταποντίζετε(海に投げる); τίνων δεῖ χειρῶν(手) γενέσθαι τὸ ἔργον; ἐκείνων[χειρῶν] αἳ τοῦ βωμοῦ τὸ σῶμα τοὐμὸν ἀφελκύσασαι(ア分ἀφέλκω引き離す) τοῖς ἐχθροῖς παρέδωκαν. μᾶλλον δέ, κοινὸν ὑμῶν ἁπάντων γενέσθω. πάντες ἐχειροτονήσατε(χειροτονέω賛成する), πάντες ἀνασπάσατε(引き離す), ἤ, εἰ βούλεσθε, οἱ μὲν ἀνασπώντων(命 引き離す), οἱ δὲ παρακαλούντων(命 囃し立てる).しかしながら、我々がいま問うべきことは、何が祭壇への崇拝をないがしろにするように促したかではなく、何の価値もない祭壇を一旦なくすことが有益ではないかと言うことなのです。アテナイ人の皆さん、皆さんは何をためらっているのですか。どうして祭壇にまで一直線に向かわないのですか。どうして祭壇を足蹴にしてひっくり返さないのですか。いやそれどころか、どうして海に投げ込まないのですか。それをするのに誰の手を使う必要があるでしょうか。それは祭壇から私の体を引き離して敵に引き渡した人の手を使えばいいのです。いやそれどころか、皆さん全員が一緒にすればいいのです。皆さんが全員で決定して全員で私を祭壇から引き離したのですから。あるいは、お好みなら、ある人が私を祭壇から引き離し、ある人がそれを囃し立てればよいのです。
[33] ἀκολουθήσατε(ア命 従う) τοῖς ὑμετέροις αὐτῶν ‹τρόποις›, ἐπειδὴ μὴ τοῖς τῶν προγόνων(祖先), οἳ τοὺς σφαγέας(殺人犯) τῶν τῷ Κύλωνι(キュロン) συγκατασχόντων(占領を助けた) τὴν ἀκρόπολιν ἐξήλασαν(追い出す) ἐναγεῖς(呪われて) τε νομίσαντες καὶ τῆς Ἀθηνᾶς ἀλιτηρίους(有罪の). καίτοι μεῖζον ἠδίκησαν τὴν πόλιν οἱ τύραννον ἐπαγαγόντες(導入) τοῖς νόμοις, ἀλλ' ὅμως καὶ τοῖς τὰ τηλικαῦτα τολμῶσιν ‹ᾤοντο›(思った) ἀρκεῖν(十分) εἰς σωτηρίαν τοὺς θεούς.皆さんは自分のやり方に従えばいいのです。しかし、それは祖先のやり方ではありません。我らの祖先は、キュロンのアクロポリス占領の協力者たち(=祭壇にすがった者たち)を殺した人たちを、呪われた人たち、アテネ女神に罪を犯した人たちとみなして追放しました(Th.1.126)。確かに、法を利用して僣主をもたらした人たちの方が、国にもっと大きな罪を犯したのですが、それでも、これほど大罪を企てた人たちでさえ救済する力が神々にはあると信じられていたのです。
[34] Τότε μὲν οὖν εἰκότως οὐδὲν ἐγράφετο τοιοῦτον τιμωμένων τῶν βωμῶν, νῦν δὲ τί φείδεσθε(〜しないでおく) λίθων ὧν ἐξηλείψατε(消す) τὴν ἰσχύν(力); τί στένεις, Ὑπερίδη καὶ Πολύευκτε καὶ Λυκοῦργε καὶ πάντες οἱ τῆς ἐμῆς μιμηταὶ(模倣者) πολιτείας; οὐκ ἀφαιροῦμαι(取り去る) καταφυγῆς ὑμᾶς, οὔ. ἀλλ' οὐκ ἐῶ κεναῖς ἐλπίσιν ἀπατᾶσθαι(騙される). τίς γὰρ ὑμῶν ἀνθέξεται(ἀντέχω守る) Δημοσθένους(属) οὐκ ἀντιλαβόμενος(守る); τίς ὑμᾶς ἐλεήσει τοὺς ἐμοὺς πόνους οὐκ αἰσχυνθείς(恥じる); τίς ἀποδώσει(戻す) τῷ βωμῷ τὴν ῥώμην(力) ἐν ὑμετέροις κινδύνοις, ἣν ἐν τοῖς ἐμοῖς ἀφείλετο; προσδοκῶντες(期待する) μὲν οὖν ὁμοίας καθ' ὑμῶν αὐτῶν πρεσβείας νοῦν ἔχειν μοι δοκεῖτε, ὥρα(〜の時だ) δὲ ὑμῖν ζητεῖν ἑτέραν ἀποστροφήν(避難所).当時も祭壇は尊重されていましたが、当然そのような事を定めた法律は何もありませんでした。しかし、今や皆さんは自らの手で力を奪ってしまった祭壇の石をどうして残しておくのでしょうか。ヒュペリデス君、ポリュエウクテス君、ルクルゴス君、私の政治を真似ている君たちは何を嘆いているのでしょうか。私は君たちの避難場所を奪おうというのではありません。そうではなく、君たちが虚しい希望に騙されないようにしているのです。デモステネスを守らなかった人たちの誰が君たちを守るでしょうか。私の苦難を恥じなかった人たちの誰が君たちを哀れむでしょうか。私が危機にあったときに祭壇の力を奪った人の誰が、君たちが危機にあったときに祭壇の力を戻すでしょうか。賢明な君たちは私の時と同じような使節が自分たちにもやってくると思っているのでしょう。今こそ君たちは別の避難場所を探すべきなのです。
[35] ἐγὼ μὲν οὖν ὅπως ἂν σωζοίμην εὗρον. χαιρέτω(さらば) μὲν τὸ φίλτατόν μοί ποτε τουτὶ χωρίον ἐν ᾧ τὸν δῆμον ἐνουθέτουν(警告), χαιρέτω δὲ τὸ βουλευτήριον(議会) καὶ προβουλεύματα(予備決議) καὶ ψηφίσματα(投票) καὶ πρεσβεῖαι(使節) καὶ ταλαιπωρίαι(苦労) τοὺς μὲν ἄλλους ὠφελοῦσαι(助ける), τὸν δὲ λέγοντα ζημιοῦσαι(傷つける). καίτοι Φίλιππος τοῦτό γε οὐκ ἐπέταττεν(命ずる), ἀλλ' ὑπὸ τῶν παθῶν παιδεύομαι σιωπᾶν. ὑμεῖς δὲ μένετε μὲν ἐπὶ τῆς τάξεως, εἰ δοκεῖ, περισκοπεῖτε δὲ ἤδη λιμένα(避難所) ἕτερον, ὡς ὅ γε τοῦ βωμοῦ κέκλεισται(閉じた). ἂν δ' ἄρα ποτὲ Ἀθηναῖοι γένωνται φιλάνθρωποι καὶ δείξωσι πάλιν ὡς ἔχουσιν ἐν ταῖς φύσεσιν οἶκτον(哀れみ), καὶ τοῖς ἔργοις ἀνανεώσωνται(再開する) τὸν ἔλεον, ἔσται τις ὁ γράφων(提案) ἱδρύεσθαι(据えられる) πάλιν τὸν βωμόν.私は自分を救う方法を見つけています。かつて私が民衆に対して何度も警告してきた最愛の地よ、さようなら。議会と予備決議と投票と使節と、人助けにはなっても弁論家本人には損にしかならない苦労よ、さようなら。しかし、これはピリッポスが命じたことではありませんが、私は自分の経験から黙ることを学んだのです。しかし、君たちはよければいまの仕事に留まりたまえ。そして、祭壇から締め出されてしまったからには、君たちは別の避難所を探したまえ。もしアテナイ人がいつか人情のある民族となって、本性では哀れみのあることを見せて、哀れみを復活させことを行動で示すなら、祭壇を再び据えることを提案する人が現れることでしょう。
Translated into Japanese by (c)Tomokazu Hanafusa 2021.8.22 - 12.4